テスト週間の真っ只中、これが終わればいよいよ夏休みですね。
皆さんはもう、アリオーゾVol.19「もしも、」はご覧になりましたか?
その中の企画「もしも、を叶える方法教えます」でお話を伺った上智OBで、博報堂ケトルCEOの嶋浩一郎さんへのインタビューでは、残念ながら紙面には載せきれなかったところもありました。
というわけで、今回はそんな冊子未収録パートを特別にお見せします!
冊子に収録されている部分もありますので、
見たよ!な人も貰いそびれた!な人もこの記事を読んで、夏を迎えましょう!
嶋浩一郎(しまこういちろう)さんとは
1968年東京都生まれ。1993年博報堂入社。コーポレート・コミュニケーション局で企業のPR活動に携わる。01年朝日新聞社に出向。スターバックスコーヒーなどで販売された若者向け新聞「SEVEN」編集ディレクター。02年から04年に博報堂刊『広告』編集長を務める。2004年「本屋大賞」立ち上げに参画。現在NPO本屋大賞実行委員会理事。06年既存の手法にとらわれないコミュニケーションを実施する「博報堂ケトル」を設立。カルチャー誌『ケトル』の編集長、エリアニュースサイト「赤坂経済新聞」編集長などメディアコンテンツ制作にも積極的に関わる。2012年東京下北沢に内沼晋太郎との共同事業として本屋B&Bを開業。
博報堂ケトルホームページより引用
アイデアを生む秘訣
知らない世界への「修行」
──アイデアを生むための秘訣を教えてください。
あえて発見がしやすい環境に自分を追い込んでいるのもあります。
たとえば、今は小説のカフカの『城』っていう本と、地層についての本とダイオウグソクムシについての本とギリシャ神話と星についての本を乱読で同時進行しています。それもあえてしていることで、4、5冊併読しているときは自分が読まないような本をあえて必ず1冊入れてみるんです。人って特にネット時代になると好きなものしか見に行かなくなっちゃうからそうしているんです。
みうらじゅんさんが「修行」といって絶対自分じゃ行かない映画を見に行ってらっしゃるのですが、自分も見習って普段だったら絶対行かないアーティストのライブや映画に行ってます。例えば、地下アイドルのライブとか、アニメ映画の応援上映とか、大物演歌歌手のディナーショーとか。
誰かと行くとイベントになってしまうので、なるべく一人でいきます。一人でいくと周りの熱狂的なファンの中で浮きまくるんですよ。応援のお作法とかコールとかさっぱり分からない。でも、それだけ人を惹き付けるコンテンツはすごいと素直にリスペクトしてファンの一員に加わるんです。そういう修行をやって、絶えず異質な情報が、まるで隕石が自分に降り掛かってくるかのような状況をつくり出しています。
──本って興味が湧かないと、途中で飽きてやめちゃったりするんですけど、そういうことはありますか?
本とかはつまらなければ、やめちゃっていいと思います。本をたくさん読むコツはつまらなかったらすぐやめるってことだから。無理してつまんないの読んでもろくなことはないです。第1章を読めば書きたいことは書いてあるので、それで大体わかります。本を崇め奉りすぎずに、もっとカジュアルに本は使っていい気がします。
──「修行」はビジネスマンとして仕事のためにやっているんですか?
そういう訳でもないです。
映画のプロデューサーの方と話していたのですが、宮崎駿さんは毎日思いついた絵コンテを描いて「どう?どう?」って周りの人に見せるんだそうです。でもそれは特に何かの企画ではなくて、思いついた絵を描いているんです。それを聞いて、なるほどと思いました。
確かに自分も昔クライアントの発注ないけど面白い企画を色々考えるのが大好きだったんです。だからビジネスマンだからやっているってだけではなく、面白いからやっているっていう、両方の面があります。
無駄にこそ価値がある
──今って自分の好きなことをとことん追求するほうがいいという風潮があると思います。
それはそれでもちろんいいことだと思います。自分のやりたいことを突き詰めるためにも一見ムダな情報、つまり異物はとても大事です。動物の生態からイノベーションを学ぶバイオミメティクスってあるじゃないですか。
例えば、新幹線のパンタグラフの騒音を解決しなきゃいけなかった時、JRの人はフクロウは獲物をつかまえるときすごい高速で飛ぶのに獲物に気づかれないように音を立てない、何故だろうと疑問に思ったわけです。で、フクロウの羽のギザギザをパンタグラフに付けてみたら騒音がしなくなった。
明後日の方向からくるアイデアが意外に課題を解決することが頻繁に起きるんですよ。その業界の狭い範疇のことだけ考えていてもなかなか新しいアイデアは生まれない。明後日の方向を見てみる、あえて自分が苦手なもの、普段接しないものを見てみるのは、意外に好きなことを前進させることになるんだよね。
つまり課題解決をするためのアイデアをつくるには、ネタの引出しをたくさん持ってた方がいいわけです。みんなが価値があると思っているものには、もちろん価値があるんだけれど、それだけ追い求めていたら結局人と同じになってしまう。いま、世の中の人がまだ気づいていないことの中から価値を探せると強いんですよ。さっきのフクロウの話みたいに意外なところからほとんどのソリューションはやってくるんです。
日常に潜む欲望の「顕在化」
草食男子、マイルドヤンキー、おひとり様……
──意識しないと自分の好きなことだけやって終わっちゃいそうですね。
忙しくなっちゃうとそうなりがちですよね。
だけど、同じことをひたすらやり続けることもありますよ。今週は冷やし中華しか食べないとか。そうすると違和感とかがわかります。俺は錦糸卵は五ミリに切ったのが一番好きだとか。企画って、日常の違和感にどれだけ気付けるかだと思います。
草食男子って昔からいたかもしれないけど、顕在化していませんでした。「草食男子」って言葉ができて、「あ~いるいる、そういうなよなよしてる男の子」って気づくんです。他には、「マイルドヤンキーいるいる、そういう地元大好きな人たち」とか「おひとり様いるいる、そういう一人で食べてる人たち」ってわかるわけです。
顕在化されていることで、おひとり様向けメニューとかが出来たりして、おひとり様の欲望に応えるビジネスも生まれてくるんですよね。その意味で、発見して顕在化した人はすごいと思います。
でも大事なことはマイルドヤンキーもおひとり様も実は全員が目撃していたけど、それが世の中の新しい欲望の胎動だとか欲望の萌芽だって気づけたかどうかなわけです。
今までは上司や同僚とご飯いったり旅行したりっていうのが当たり前だったけど、そうじゃない感情や欲望をもった人が世の中に出現したという、新しい欲望の発見。これができる人とできない人では大きな差があるわけです。だから日常の風景にどんだけ情報を読み取るかとか、そういうことも企画を立てる上では重要なことかもしれません。
──その感覚はセンス的なものなのですか?
トレーニングでもつくと思いますけども、例えばソーシャルメディアで「なんでアイコンを子供のころの写真にするやつが多いんだろう」だとか、「ハッシュタグの後に長い文字を打つ女性がいるんだろう」だとか、「なんで足先だけの写真上げる人もいるんだろう」だとかって言葉にしたくなる。
たぶんそこに違和感を感じたらそうせざるを得ない、あるいはそうしたい欲求や欲望が背後にあるわけですよね。そんな風に言語化できるとビジネスになると思うんです。だから、日常の違和感をどれだけ感じられるかっていう、この感性は大事だと思います。
違和感を「言語化」する
──学生の頃から客観的に物事を見るタイプだったのですか?
学生の頃も、まあまあ不思議なことには気づくタイプだったかも知れないです。例えば、映画『Gravity(日本版タイトル:ゼロ・グラビティ)』で、やたらと宇宙船の中に紐がびろびろ、コードがびろびろしてるわけです。で、最後にも紐に引っ張られるシーンがあるんです。
「この監督(編集部注:アルフォンソ・キュアロン監督)って紐がびろびろしてるのが好きなんだな」とか思うと、「観たことあるなこのびろびろしてるやつ」って思うわけです。それで、ハリーポッターを観ている時に、「わかめのびろびろの中に主人公が入ってくる感じが似てるよな」って気づいて、終わってから調べてみたら「あ、同じ監督なんだ」ってわかったり。
ウェス・アンダーソン監督の『グランド・ブダペスト・ホテル』っていう映画には、やたらと箱を開けたりドアを開けたりするシーンが出てくる。
最初のシーンで、墓場の墓地の扉が横に開くんだけど、その後もホテルの部屋のドアを開けると何かが起きたりとか、寝台列車のコンパートメントのドアを開けると何かが起きたりとか、「この人ドア開けフェチなんだな」って、そういうことは気づいて言語化するタイプだと思います。そう考えると、言語化するのは結構好きなのかもしれません。
──言葉を操る力に長けていないとなかなか難しいですよね。
そうですね。モヤモヤだとみんなに伝わらない。言葉にすればみんなわかってくれます。
いかがでしたか?
モヤモヤとした感覚を人にうまく伝えるということは、意外に難しいもの。
でもそれを「言語化」する力があれば、TwitterやInstagramでいいねがつきまくって、バズらせることが出来るかも知れませんね。みんながなんとなく抱えている気持ちを言葉にして言い当てる、そのためのヒントは日常に何気なく潜んでいます。
この夏休み、平凡な日常が非凡で刺激的な日々になるといいですね。
ちなみに…
僕たちが「修行」した記事あります!ぜひ読んでみてください!
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