本誌『アリオーゾ Vol.17 「欲しがり」』は皆さんもう読んでいただけましたか?
本誌では、自分のやりたいことを見つけ、そこに向かって真っすぐ突き進む”欲しがりな人”として、モデルの崎野亜紀子さんを紹介しました。
この企画では本誌とタイアップして、もう一人、”欲しがりな人”にお会いしました。
鷹鳥屋さんのこれまでの人生やこれからの目標、”欲しがり”の途中にいる人へのメッセージを伺いました。
鷹鳥屋明(たかとりやあきら)さんとは
大分県出身、筑波大学卒業後メーカーに勤務。メーカー勤務時代にサウジアラビアに滞在。その後バーレーン、カタール、UAE、ヨルダン、パレスチナを巡り中東世界へ興味を持ち混沌とした中東情勢を学びつつ日本と中東を繋げるべくSNSやメディア媒体等を活用し日本文化やアラブ向けの宣伝活動を行う。現在数万単位のアラブ人たちからのフォローを集めLike数は220万超え。さらなる中東における日本の認知度を上げるために日本と中東を行き来しながら活動中。1985年生まれ。
Lifehackerより引用
社会人になってからの10年の歩み
メーカーに就職
本当はアカデミックな世界に行きたかったんですけど、そのポスト競争の苛烈さから「やベぇ、アカデミックな世界生きてくの無理やん……」って思って、あとは兄がマスター出ていて、これ以上実家に負担かけちゃいけないなぁって思って、アカデミックは諦めて、もう社会人になろうと思いました。
その後6年くらいメーカーで働いてました。その中で主に国内を見ていましたけど、だんだんキャリアが上がっていくにつれて海外案件を担当するようになっていって、その中で中東というマーケットもあるということを理解しました。
サウジアラビアへ留学
上智大学の某N村っていう人が、サウジアラビアに高校3年住んでいた人で、その人に「サウジいいよ、マジいいよ」っていうことをずっと言われて。
それである日、「日本・サウジ交流青年団」という、日本の若者10人ほどとサウジアラビアの青年10人ほどを短期間ですけど交換留学させるプログラムを知って、N村に相談して応募しました。
倍率が高かったらしいんですけど受かって、メーカー社員の身分でありながら、とりあえず有給を使わせていただいてサウジアラビアに10日ほど行ってたんですね。
もともと社会人生活をする中で私はお酒飲めない体質のため、社会人生活で苦労してたんです。だから酒飲まないで褒められるっていう環境って最高じゃないか、って。
アラブで有名に
それまではインドや中国ばっかりやってたんだけど、そこから一気に中東・アラブ方面へシフトをしました。
で帰国してから、この格好で外務省のパーティーとかいろんなところに行くと、いろんな大使館から引っ張りだこになってどんどん参加してたら、いつの間にかそこそこ有名になってました。
初めてInstagramをやったら、1ヶ月か2ヶ月で数千人くらいバンってフォロワー数いって、まぁ最初の起爆剤みたいなところがあったわけですね。2年経った今では6万8千人くらいになりました。
商社へ転職
知り合いから転職を勧められて、えぇ、正直提示された額に目がくらんでしまいまして(笑)。めでたくとある会社に転職して20代にして年収1000万近くになったんです。
だけど私は前述の通り酒が飲めない人間なので、その会社では地獄だったんですよ 。私は「あ、いかん、これは自分がダメになるな」って、ポンと1年で辞めてしまいました。
紛争地域でのNGO活動
その後、さぁ次どこで働こうかなぁって思ってたタイミングで友人から「ヨルダンに行くいい仕事がありますぜ」って言われまして。
産油国ばかり見てたから、非産油国も見なきゃいけないって思って。
契約書を書く寸前になって「パレスチナ(ガザ地区も含む)」って書かれていて(笑)。「え、今ガザ戦争やってるとこじゃん」みたいなところで「おぅ、詐欺じゃー」って思ったけど、「まぁこれも経験」とサインしちゃって。
月給1X万円でパレスチナの紛争地帯で働く”素敵なお仕事”をしました(笑)。
銃撃戦みたいなのも2回くらい経験しましたけど、でも前会社の飲み会よりかはずっと俺にとっては楽だったから、そっちの方がねぇ……。
現在の仕事
パレスチナの方で1年間NGO経験をした後、今は日本と中東の合弁のベンチャーが幾つかありまして、その中のひとつの会社で広報と渉外みたいな部門で今働いてます。
鷹鳥屋さんにとっての中東の魅力
お酒を飲まなくていい
酒飲まないでも仕事できるから。結構これ大きい。
私みたいな人にとっては、これぐらい……500mlサイズくらいのビール飲んで、私ジョッキ1杯のビールで救急車運ばれたことあるのです。お酒って私にとってはすごく危険な飲み物で、それを強要されるのって相当きついんですよ。
そういうのが無くて楽に仕事できるところっていったら必然的にイスラーム系のところとかになっちゃいましたね。
歴史的観点から見た面白さ
昔、中国史と併せてオスマントルコも勉強してたので。どうしてもトルコ史ってアラブ系の地域も絡んでくるんですね。だから下地はあったんです。
あと、王国という統治体制がいまだに残ってるところってけっこう興味深いんですよ。サウジアラビア王国ですしバーレーンも王国ですし、カタールも首長が治めるところだし、ヨルダンもオマーンも国王や首長がいますから。この地域ってかつての王制が残っている数少ないゾーンではあるわけですね。そういう国々がこのグローバル社会の中で、どう推移していくかって個人的に興味が強いところあります。歴史屋の観点から見た面白さっていうのも中東はあると思います。
分かりやすい国民性
彼らいい感じに単純で分かりやすいですし、私九州人なので、そういう分かりやすいのすごい好きなんです。
白は白、黒は黒みたいな感じではっきりしてるので。それと、執着することに対してはしっかりcrazy for somethingみたいになるんですけど、興味なくなった瞬間にパッと。
まあ熱しやすく冷めやすいところもあるんですけど、そこが分かりやすいんで、私にとって付き合いが結構楽。
暑い気候
あと、あっち暑いからいいっていうのはありますね。寒いのがダメなんです私。20℃以下になると活動が鈍くなっちゃう。今46℃とかだからね。いやあカラッとしてていいなぁ、みたいな。向こうって湿度が0~10%くらいです。
あ、ちなみに、こうやって布で顔を全面覆ってもけっこう見えるんですよ。だから砂埃に巻き込まれても動けます。変なイメージがついて危険な過激派みたいだと思う人もいるかもしれないけど、現地の生活の知恵なんですよね。だから実は宗教要素ってあんまりないんですよ。
活動のモチベーション
中東のフォロワーたちからのリアクションがすごく好意的なのはありがたいですね。これはモチベーションになります。
インスタグラム上で「こういうのが私見たい」とか「こういう情報知りたいの」っていう声に対して、「こうだぜ!」って出した時の嬉しさとか、コメントですね、私今まで一番多いのはコメント1000件を超えてPV数だと、100万くらい超えてるやつがあるんですよ。
そういうの考えると、ありがたいなあって。こんなサラリーマンが、1人でこんなことやってるだけなのに、そんな多くの人に影響与えることができてうれしいなっていうこと。
私は宗教も違うし民族も違う人間だけど、これだけ向こうに影響与えられてるっていうのは一つのモチベーションになってますね。
これからの目標
短期的な目標
今課題が一個出されていて、某出版社様から、本書けって話が来てて。
本の内容は、初心者に対し中東の人との接し方についての指南書。中東に関する政治や経済に関する本はいっぱいあるんですけど、等身大の人対人の接し方に対しての本って存在してないんですよ。残念ながら。
例えばなんですけど、中東の人と会う時に、まず、握手したあと、横の頬っぺたどうしを合わせてチュってやるんですよ。これを、右で1回、左で2回やるのがサウジのやり方なんですよ。で、これを左だけで2回やるのが、カタールなんですね。UAEだと、鼻と鼻を合わせてチュってやるんですよ。
これって礼儀作法、要はお辞儀の角度みたいな話なんですよ。でもこれができるできないで、最初の距離感が一気に詰まるんですよ。
細かいところまで理解して着てる日本人って少ないんですよ。ひとつ国に対して知ってる人はいるんでしょうけど、ここまで全部をマスターしてるのって、たぶん一部の専門家や大学教授クラスだと思うんですね。
そういうところを伝えて、入社した時に受けるマナー講習みたいなのってあるじゃないですか。挨拶だけじゃなくって、ボディーコミュニケーションの部分もできるようにしておくのが、たぶん今後はいいだろうと思って。私そこまで落とし込んで書こうと思ってます。
私の恰好って逆に言えば、外国人がやってきて、ちゃんと襦袢(じゅばん)着て、着物着て、袴穿いて、裃付けて、扇子刺して「俺、徳川将軍では意外と綱吉好きなんだよね」とか言ってるようなもので。そういう話ができたら、「やばい、こいつは分かってる。」って思われるわけじゃないですか。
そこまで、1冊では足りないでしょうけど、それが分かってたら少なくとも表層からはもう一歩踏み込んだ会話ができるような指南書をつくるのが今の私の仕事だと思ってます。
中長期的な目標
日本って人口がどんどん減ってますし、国際社会におけるプレゼンテーション能力って落ちてるんですね。
だからそれを読んでマスターしていく奴がどんどん増えていって、私みたいな人間があと100人増えたら、私が今ざっくり9万フォロワーがいるんで、900万人のアラブ人のファンが作れるわけですね。これって、UAEの人口超えるんですね。頑張れば。1000人増えたら、中東ほぼ制覇します。
すごくざっくりで被っている人とか考えてないですけど、単純計算でこうやってできたら、「あコイツ、アラブでうまくいったな。じゃあ私はウズベキスタンでやろう。」とか「私はマレーシアでやろう」とか、そういう人が増えて行って、1人当たりが一騎当千じゃないですけど、力をつけていって、世界中で活躍する。
その国専用の影の大使みたいになるような、日本人が増えたらいいなあと思ってます。
文化の違いは、言語である程度乗り越えられると思うんですよ。言語がある程度意思疎通のできる会話ができるんだったら、文化は、結局「なぜ?」じゃないですか。なぜそうするのかっていうことを突き詰める言語能力があったら、文化の謎って基本的に解けるはずなんですよ。だからそれをしないで「こいつらわけわからん」って言ってるのは、現地に行って「なんでこいつらこんなことするんだ」って落とし込んでないからだと思うんです。
欲しがりの途中にいる人たちにメッセージ
先駆者って絶対笑われるから、それを貫いてずっと通して何か形を成せば、笑った連中を見返すことができると思います。
私だって、今までさんざん色々言われてきたか。でも蓄積された専門的なこと話すようになってから、「この人って実はすごい人だったんだ」っていう見返すことができるようになりました。
でもこれって、わずか2、3年ですが、これも突き通した結果なので。
もし私がこの格好とかずっとしてなくて、突然国王が来たからあの格好してたっていったら、みんなは「何アイツ媚びてんだ。国王来たから調子乗ってるよ。」って言うんでしょうけど、でも私そのずっと前から着続けてて、かつサウジアラビア行ってきた報告会とか、この格好でずっとやってきてたんですね。だから、知ってる人たちからすると、「あの人は貫き通した結果、評価が今、こんな形で出てきたんだな」って言われるようになりました。
もちろん元々評価してくれていた人はいますよ。ただ、馬鹿にしてた人たちも同時にたくさんいましたからね。
だから、周りになんて言われようが、信念曲げたくないって思ったことは、絶対続けたほうがいいと思います。意外と人生が長いので絶対日の目を見ることって生きてればあると思います。ただもちろんオープンにしなくてもいいんですけど。
年季が積み重なれば積み重なるほど、ほかの人よりアドバンテージが増します。
如何にその事象に対して自分が好きかっていうのを、応用を利かせて自分自身の形で表していたら圧倒的な差がどんどん出てくるので、ぜひやってくださいと私は思います。
鷹鳥屋明さんInstagram: shams_qamar_jp
鷹鳥屋明さんTwitter: @Takatoriya
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