データサイエンティスト
皆さんはどのような印象を持ちますか?
「かっこいい」「頭良さそう」「憧れる」
あるいは
「自分とは縁がない」「計算とか無理」
とかでしょうか。
人によって様々ですが、「データ分析は、人間全員が持っている素養」と語る人が上智にいます。
それではその方をご紹介しましょう。
金子和樹 さんです。
- お名前: 金子和樹(かねこかずき)さん
- 所属: 理工学部 情報理工学科 3年
- 『JSAA Analytics Challenge Cup』にて最優秀賞を受賞
──金子さんは、『JSAA Analytics Challenge Cup』で最優秀賞を獲得されたということですが、そもそもどのような大会なのですか?
横浜Fマリノスというサッカーチームの観客増員のための提案をしてください、というテーマで1ヶ月間取り組みました。
クラブの顧客データをJリーグデジタルという会社が持っていて、そこと秘密保持契約を結んでからデータを受け取ります。さらに、ドイツのSAP社という会社のソフトウェアを使ってそのデータを分析します。
1ヶ月間の本戦の前に予選があり、全国の42チームが自分のアイデアをプレゼンして、10チームが本戦に残ります。選ばれたチームがデータを提供されて、実際に1ヶ月間テーマに取り組みました。中間発表があって、SAPの社員やメンター(助言者)の方々と中間発表をして、またアイデアを練り直して2日間のファイナルプレゼンテーションに臨みます。1日目はフィールドワークで、自分が持っている仮説を実証して行く。2日目はそのフィールドワークを踏まえてのファイナルプレゼンテーションを行いました。
JSAA Analytics Challenge Cupについてはこちら
──どんな仮説を立てたのですか?
ユニフォームを購入した人と購入していない人の、次の年の来場の割合を見てみました。
すると、両者の間の定着率がかなり違うということが分かりました。最初の年に、友達に誘われたり、夫に誘われて行ったり、とかいう人たちがユニフォームを買わずに観戦して次の年には来なくなっている割合が高いことに着目しました。それが現状把握となって、つまり、最初の年にユニフォームを買ってもらえれば、次の年に定着するのではないか。
自分たちは次の年に試合を観に来ない人を「休眠者」と呼んでいたんですけど、休眠者を防ぐことが観客数を増やすこととイコールである、ということを定義付けしました。具体的には機械学習、つまりAIで、ある人が次の年に休眠するかしないかというモデルを作って、新しく来た人をそのモデルに入れると、その人が休眠するのかしないのかっていうのが予測値として出てきます。
それから、休眠者とされた人たちに対してユニフォームを買ってもらうことを目指しました。ただ、その人たちは前の年にユニフォームを買っていないので、ただユニフォームを買うように勧めても買ってもらえるわけがない。
なので、ディープ・ラーニングという技を使って、その人がどのユニフォームが好きか、というのを予測しました。与えられたデータから、「この人はこの選手のユニフォームが好きだ」というのを予測して、新しく来た人にそのモデルを組み込むと、「この人はこういう選手が好きだ」というのがわかるので、その選手のユニフォームをレコメンドします。もしユニフォームを買ってもらえれば、次の年に来てもらえて、それが観客数増加となる、という風にして、二段階に分けました。
一段階目は、休眠するか休眠しないかの予測です。二段階目は、休眠する人に対して好きな選手のユニフォームをレコメンドすることによって来場者を増やす、ということです。
──自分たちのチームの強みは何だったと思いますか?
相方とは中学の同級生なんです。他のチームは同じゼミだったり、統計やAIを勉強している人同士で集まっているんですけど、自分たちのチームは完全に役割分担していました。
自分がAIを担当して、相方は浦和レッズファンなのでファンとしての気持ちを考えることを担当する、というように完全に役割を分けました。相方には「こうしたらファンが増える、こうしたら女性のファンは心を掴まれる」というような、感覚的な知識をもらいました。それを自分がプログラミングして落とし込んでいきました。
自分たちには他のチームのようにゼミの先生などの指導員がいなかったのですが、2人で他のチームに負けないくらいディスカッションを重ねたので、量で負けなかったのかなと思います。深夜1時が閉店の近所のマックに追い出されるまで作業して、その後車の中で朝までディスカッションして帰宅するという生活を続けていました。それで中盤で体を壊しました(笑)。
肉体的な挫折はあったんですけど、精神的な挫折はなくて。一切喧嘩もありませんでした。役割分担がしっかり出来ていたと思います。
──今回の経験をどう活かしたいですか?
自分の将来の夢はJリーグのクラブのオーナーになることです。
今までのクラブのオーナーの形態は大きく3つに分けることができます。親会社からの出向、プロ経営者、サッカー界叩き上げの3つです。自分は、データや統計を用いた新しい形のクラブ経営をしていきたいです。今回は非常にいい経験になり、第一歩となりました。
──大学生のうちにやりたいことは?
これまで外部で活動してきた知見や経験を基に、上智でイノベーションを起こしていきたいです。新たなプロジェクトを用意しているので、一緒に活動していく仲間をこれから募集していきます。現時点での能力は一切関係ないカリキュラムを準備してます。
──データ分析は何か敷居が高い感じがあります。
これは自分の意見なんですが、データ分析って、人間全員が持っている素養だと思うんです。
今回で言ったら、ファンの観客を増やしたいということで、相方は口で「女性ファンを増やすにはこうしたほうがいい」とか「ユニフォームを買ったらファンになってくれるんじゃね?」とか、会話形式で仮説を口で言うんです。
自分は数理モデルを作ったりして、それをプログラミングに落とし込む。この形で今回成功したように、例えば文系の人で、専門知識がなくても、感覚的に物を口で言って理系の人がそれをプログラミングに落とし込む、という風にすればむしろ強いチームになれると思っています。それこそ自分たちみたいな理系の人が集まっても、机上の空論集団みたいになってしまいます。役割はたくさんあるので、どっちが偉いとか、すごいとかいうことではなく、本当に色んな人がやるべきだなと考えています。
いかがでしたか?
データ分析、ましてAIの世界はニュースで聞くことはあっても自分には到底扱うことの出来ないものだと思っていました。金子さんによると「進学校では統計はやらないので、大体の人は大学に入ってから始める」そうなので、少しでも興味を持ったら飛び込んでみましょう。
データ分析は、
人間全員が持っている素養
この言葉が頭に残ったそこのあなたは、もしかしたらデータ分析の世界に飛び込む素地があるのかもしれません。金子さんは現在、データ分析でイノベーションを起こせるコミュニティを作ることを計画しているそうです。続報に期待しましょう!
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